前回のあらすじ

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【前回のあらすじ】
 半刻ほど前から電気仕掛けで温められていた布団は私を今か今かの待ち構えているような気がした。私はアイマスクと耳栓を手にし布団へ向かう。
 アイマスクは柔らかい、しかしそれでいて完璧な遮光性を持つそこそこ高いものだ。耳栓はシリコン製。押しつぶして耳の穴に入れてしまえば、ゆっくりと元の形状に戻り、音を遮断する。
 そうしてそれらを装着した後、人肌程度に温まった布団に横たわり、目を閉じる。その瞬間、私は宇宙に行くのだ。
 何も見えない、聞こえない。完全なる闇と無音。自分自身がこの世界からつまはじきにされたような虚無。心地よい。
 しかし宇宙の中は私の心臓の鼓動と自意識のみが存在した。心臓はおよそBPM60のテンポで動き続けている。
 
 宇宙のなかで色々な事を考える。今日起こった出来事、明日やらなければならない事、週末にやりたいこと……。
 時間が経つにつれ、意識は遠くなっていく。ふと思う。睡眠状態にある時、私は生きているのだろうか。
 今は様々な思考をし、心臓の鼓動が響いている。しかし、それが「無」となった場合……。
 つまりだ、睡眠状態の私は私が「生きている」という事を認識できるのだろうか?
 明日、目覚めた私は別の人間ではないだろうか?
 私は少しだけ怖くなったが、宇宙の闇と無音、そして布団の温かさは「それ」をどこか遠い所へと追いやっていった。眠くなってきたのである。


 私は床オナをして眠りについた。


 完全なる無が訪れた。
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