前回のあらすじ

戻る
【没ネタ#3】
タイトル:「不知火」
概要:
 「檸檬を買いに行こう。」
 私は読み終えた梶井基次郎の「檸檬」を机の上に置き、箪笥の中から外套を取り出してそのまま部屋を出た。私は今読んだ小説を味わいに行くのである。読者諸賢は小説をどのやうに味わうだろうか。一般的には読んで種々の感想を抱いて終わりだろう。他には感想を電子の海に放流する者、内容を研究する者、自らも創作を始める者・・・。人それぞれの味わい方がある。
 私の味わい方はというと「小説の内容と同じ行動をする」事である。小説の主人公または作者の心情をより深く理解できる気がするのだ。もちろん小説の内容によっては実現不可能の物もあるため、その場合は「近似値」を考え実行に移す。江戸川乱歩の「盲獣」を読んだ時は目隠しをして美少女人形を撫で廻したし、阿部公房の「箱男」を読んだ時は箱を被って過ごした。そして今回、「檸檬」を読んだ私は『八百屋で檸檬を購入し、適当な書店で檸檬を放置して帰宅する』。空想科学や怪奇物では無いため、小説の内容通りに行動できるのが嬉しい。
#省略
 が、思った通りには行かなかった。近所に果物店が無い。そもそも今の時代、果物のみを販売している店はなかなか希少ではないだろうか。仕方がない、近似値だ。近所のコンビニエンスストアで買えばいい。
#省略
 そこには檸檬が置いてあった。私が欲した紡錘型ではなく薄切りされているが。どうやら添え物用らしい。此れは駄目だ。私は今から書店に行き本の上に檸檬を置くのだ。此れを本の上に置いたら汁が付着してしまう。
#省略
 輪切りされた役立たずの檸檬の横にあった。不知火が。近似値だ。此れを檸檬とする。小説の通りに檸檬を鼻に近づけ嗅いでみた。カリフォルニヤが・・・想像に上って来ない。産地を見たらカリフォルニヤ産ではないし、それに私、今鼻が詰まってるし。
#省略
 電子書籍の影響か近所から書店が消えていたため、近似値として図書館に行くことにした。
#省略
 私は先ほど購入した不知火・・・檸檬を本の上に置き、そのまま図書館を後にした。
 すると図書館から強烈な閃光と衝撃が急ぎ足で私を追い越していった。
#省略
没の理由:「檸檬」を知っている人少なそう。
戻る


TOP

プライバシーポリシー | HOME | お問合せ
copyright © since 2019-2020 suikentsukai.