前回のあらすじ

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【前回のあらすじ】
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帰宅し、さっそく私は耳を取り外し、耳があったところへ、マイクを取り付けた。
思ったより、具合はいい。むしろ前より何もかもがクリアに聞こえるようになった。
今なら老人の痰を吐き出そうとする音もなんとか我慢できそうな気がする。
私は新しい耳が気持ちよくヘヴィメタルを聞くことができるか心配になったので、レコードを流した。
エレクトリック・ウィザードの曲が流れる。ドゥームの陰湿な音色が私を眠りへと誘う・・・。
うとうととしていた時、またしても耳の横に生えている警笛が鳴りだした。
前の耳より高性能なマイクは愚直にも、その音をダイレクトに私の脳へと伝えた。
音の波は私の脳を大きく揺らし、揺れた脳は私に幻惑的な映像を見せた。

空から無数のピンク色の糸が垂れ下がってくる。糸は遥かに長いようで、空を見上げてもどこから垂れさがっているのかは見ることができなかった。
太陽は虹色に変化し、世界をカラフルに染めている。そのせいで信号機は今、何色を示しているのか全く分からないが大丈夫そうだ。道路に車は走っていなかった。車だと思っていたものは象に変わっている。象ならば頭はいいだろうから、衝突せずにうまく走り去っていくだろう。
川を見るとそこに川は無かった。すべてがニジマスで埋め尽くされている。ぎゅうぎゅう詰めのその光景を見て、私は朝の通勤ラッシュを思い出し、不快になる。ピンク色の糸はこのニジマスを釣り上げようとしているのだろうか?
ふと家の方向を向いてみた。さっきまで私が居た家は溶けていた。まるで火をつけたろうそくの様だった。神話に出てきたイカロスは太陽に近づきすぎたせいで蝋で固めた羽を溶かされたが、私の家は何に近づきすぎたのだろうか?
そうこうしているうちに、ピンク色の糸は地面についていた。私はその糸を手繰り寄せ、何本か口に含んでみた。
その瞬間、私は昏倒し、それから二度と目覚める事は無かった。

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