前回のあらすじ

戻る
【前回のあらすじ】
(2/3)
私はとりあえず、隣町にある電気街に行った。「ここでは何でも揃う」が売り文句の電気街だった。
だがしかし、電気街の大きい店から小さい店まで隅々まで回ってみたが、耳は売っていなかった。
私はありったけの大声で尋ねた。

「耳はありますか?」

黙殺。店員は私を無視する。通りすがりの人は私を狂人を見るような目で見つめてくる。
聞き方がまずかったのだろうか、いや、足が棒になるほど歩き回ってもなかったのだ。電気街に耳は売っていないのだろう。
聞き方を変える。

「耳の代わりはありますか?」

数人の店員は補聴器を私に手渡した。
違うのだ、私の耳は「無」で満たされているから、補聴器などは意味をなさないのだ。
ゼロに何を掛けてもゼロであるように(必ずしもそうではないが)、「無」で覆われている私に、いくら増幅した音をぶつけたとしても、私のまわりの「無」がそれを邪魔するのだ。
また、聞き方を変える。

「よく音を集めるものはありますか?」
フロアにいた店員が一斉に私のところへ来た。手には様々なマイクを持っている。
なるほど、これが私の耳の代わりになるものかと思い、私はそれを購入した。
私の給与三ヶ月分に相当する指向性マイクだった。
戻る


TOP

プライバシーポリシー | HOME | お問合わせ
copyright © since 2019 suikentsukai.