前回のあらすじ

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【前回のあらすじ】
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 長い時間が過ぎた。いや、もしかすると数秒も経っていないかもしれない。この何もない空間の中では時間すらも存在しないのかもしれない。私の存在や自意識さえも。
 耳を澄ますとカチコチ、カチコチと一定周期で繰り返される機械的な音が部屋に響いていた。その単調なリズムはなぜかこの薄暗いの世界では、不思議と私を安心させてくれた。時計である。それも壁一面を埋め尽くすほどの巨大な時計だ。秒針はせわしなく動いている。もしこれが目覚まし時計で、出力する音がその大きさに比例しているならば私の耳は聾してしまうだろう。どのようにして私に気づかれること無く、この時計が出現したのかは分からない。もしかすると最初から存在していて、私が認識していなかっただけかもしれない。外の世界に居たときは、よく人に「視野が狭い」「周りに気を配れ」とよく言われた。認識力の欠如を指摘されていた。私がそんな事を言われるのは外の世界があまりにも広いせいであるからだ、と私は私自身に言い訳をしていたが、この狭い世界の中でさえ自分以外のものの存在を認識できなかったという事実は、私が「欠けている」人間だという事を強く証明しているように思えた。

(続く)
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