【前回のあらすじ】
ある日、私の電車で女性が痴漢にあっていた。
痴漢は30代前後の中肉中背の男であった。
もう3駅以上もの間、女は男に尻を揉まれていた。
女はもう我慢が出来なくなったのだろう、大きな声で、しかし震えながら叫んだのであった。
「この人!痴漢です!」
車内の視線が女と男に集中する。
舌打ち、痴漢を罵る声などがぼそぼそと聞こえる。
そして正義感あふるる男性が痴漢を捕まえようとした。
その瞬間である。
「はい!僕、痴漢です!」
痴漢が元気に言った。
「はい!僕、痴漢です!」
それはあたかも授業参観で親にいいところを見せようとしている子供が先生に指名されたときの様である。
背筋をまっすぐに、右手も耳に当ててまっすぐに伸ばしている。
しかし顔は瞬きを何度も繰り返し、よだれをたらしている。
するとどうであろうか。
車内の男に対する視線は痴漢という犯罪者を見るものからキチガイを見るものへと変わった。
「はい!僕、痴漢です!」
痴漢は繰り返す。
女は言った。
「誰か!助けてください!この人痴漢なんです!」
「はい!僕、痴漢です!」
もう無駄である。
女が何を言おうとも男は痴漢とは見られなくなっている。
唯のキチガイである。
そのうち車内から、女の叫び声がうるさいなどとの訴えが出てくるようになり、女は次の駅で降りて行った。
男は私が電車を降りるまでずっと「私は痴漢」宣言をしていた。
私は痴漢で捕まることから逃れるためにあのような痴態を演じた彼に畏敬の念を抱いた。
しかしああはなりたくない。
ある日、私の電車で女性が痴漢にあっていた。
痴漢は30代前後の中肉中背の男であった。
もう3駅以上もの間、女は男に尻を揉まれていた。
女はもう我慢が出来なくなったのだろう、大きな声で、しかし震えながら叫んだのであった。
「この人!痴漢です!」
車内の視線が女と男に集中する。
舌打ち、痴漢を罵る声などがぼそぼそと聞こえる。
そして正義感あふるる男性が痴漢を捕まえようとした。
その瞬間である。
「はい!僕、痴漢です!」
痴漢が元気に言った。
「はい!僕、痴漢です!」
それはあたかも授業参観で親にいいところを見せようとしている子供が先生に指名されたときの様である。
背筋をまっすぐに、右手も耳に当ててまっすぐに伸ばしている。
しかし顔は瞬きを何度も繰り返し、よだれをたらしている。
するとどうであろうか。
車内の男に対する視線は痴漢という犯罪者を見るものからキチガイを見るものへと変わった。
「はい!僕、痴漢です!」
痴漢は繰り返す。
女は言った。
「誰か!助けてください!この人痴漢なんです!」
「はい!僕、痴漢です!」
もう無駄である。
女が何を言おうとも男は痴漢とは見られなくなっている。
唯のキチガイである。
そのうち車内から、女の叫び声がうるさいなどとの訴えが出てくるようになり、女は次の駅で降りて行った。
男は私が電車を降りるまでずっと「私は痴漢」宣言をしていた。
私は痴漢で捕まることから逃れるためにあのような痴態を演じた彼に畏敬の念を抱いた。
しかしああはなりたくない。