前回のあらすじ

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【前回のあらすじ】
 目の前に存在していた星の形をした赤いコップは、私が手に取ると同時に音もたてずに崩れていった。私の足元に積もった桃色の粉末は換気扇が稼働したことにより発生した微小な気流により、私から徐々に徐々に離れていく。私は逃げ遅れた粉末の一部を唾で湿らせた人差し指で掬い上げた。桃色の粉末は私の指をほのかに赤らめさせている。私は不意に粉末を口に含んでみた。その時から虚構空間の産声が聞こえ始めたのだ。
 全身の毛穴はまだ見ぬ母親を切望し、金切り声を上げる。心臓は肝臓の奏でるシャッフルビートに乗って付点8部でリズムを刻む。脳はただ沈黙していた。

 そうこうしているうちにピンク色の象が私に向かって突進してくるのであった。そうか!マグカップは象の一部分でしかなかったのだ!
 私はなすすべもなく象に踏みつぶされた。私の体液が地面を憂鬱色に染め上げていく。象は憂鬱色の足跡を残し走り去っていった。

 季節は移り替わり冬が来る。純白の初雪は私の憂鬱色と混ざり合い、そのまま溶けていく。
 後にはマグカップだけが残った。
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