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40:竹の子の娘_竹取-a
第4世代 作者:余所者 
いい妄想ね:1 再生数(UV):36 妄想履歴:252932
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ああ、もうすぐだ。
もうすぐ彼は死んでしまう。
私は何度目かのデートの時、隣にいる彼を見て思った。

私を好きになった人は、必ず死んでしまうのだ。
突如、地面から生えてきた竹の子に串刺しにされて。
地面がコンクリートだろうがアスファルトだろうが関係ない。とにかくそうなのだ。

今、彼は熱心に自身の体験について語っている。
それももうすぐ、もうすぐ唐突に終わってしまう。

めきり。

地面が盛り上がる音が聞こえた気がした。
【千歳_追記】

ぐちゃり。呆気無く死んだ。

……彼の隣の男が。

何故?死ぬはずの彼は生きて、死ぬはずで無い男が死んだ。
…いや、合っているのか。詰まる所、彼は私を好きではなく、男が私を好きになったのか。

目の前で驚いている彼が滑稽に思え、くすりと嘲笑った。

【愚息武者_追記】
抱きしめられた。線香の香りに近い、淡白な香りが鼻腔に満ちる。
………?
怪我はないかい、と言ってくる。頷くと、よかった、と言い、抱く力を強めてくる。
……なんだ、どういう事だ?目の前で竹の子に貫かれて人が死んだのに、私の心配?
……………バカじゃないの。
さて、このバカさ加減には呆れるが、もっと彼について知る必要が出てきた。
この行動が演技だとは流石に考えにくい。
つまり、私の「竹の子のジンクス」は、私の思っていたものとは少し違うという事になる。
私を好きになる以外にも条件があるのだ。それを突き止めなければ、いつ私自身が妖刀竹の子の錆になるとも限らない。
彼の家が近くにあると聞いたのを思い出し、怪我はしていないが、気分が優れないので彼の家で休みたい、と伝える。デートの相手を家に上げたくない男はいない。
当然彼は快諾した。
彼はミニマリストのようだ。彼の家は物が少なく、殺風景になるのを防ぐかのようにリビングには絵が一枚だけ飾ってあった。
月の光に照らされた湖の絵だった。美しかった。
何故だか胸が締め付けられるようだった。
「あの絵、素敵ね」
彼は私に出す料理を作る手を止め、こちらに微笑む。
「うん、僕のお気に入りなんだ。気に入ってくれて嬉しいよ。」
彼の作った生姜焼きは美味しかった。ご飯に餅米を混ぜているらしく、普通のものよりもちもちしている。しじみの味噌汁は疲れを癒す暖かさだった。
「美味しい」
「それは良かった。おかわりもあるから。」
暫しの沈黙の後、彼がポツリと言った。
「実はさ、あの絵、僕が描いたんだ。」
「え?本当に?絵が描けるなんて初耳よ。」
「うん、まぁあの絵以外は気にいるものがなくて、仕舞いこんでるんだけどね。」
彼は照れ臭そうに笑う。
何故だか他の絵も見てみたいと思った。
「何か飲む?デザートは?」
「頂くわ。」
バニラアイスと、高めのブランデーが出てきた。
「お酒強いの?」
彼はにやりと笑う。
「誰かと呑んで先に潰れた事ないよ。」
「あら、奇遇ね。私もよ。」
それから3時間後、くらいだったと思う。
「……ぁ〜。もうダメ。これ以上飲んだら潰れるわ。」
「…………僕も、かなり回ってきた。今日は引き分けにしようか。もう遅いし泊まっていきなよ。」
彼は私より少しだけ平気そうだった。自分より酒に強い人に会ったのは初めてだ。
「うん、お世話になるわ。ムニヤ……」
「取り敢えず横になろう。ほら。」
彼に抱き上げられる。その瞬間、心臓が跳ねた。
なんだ、これは。どうやら酒が回りすぎているようだ。
彼にベッドに横たえられ、毛布を掛けてもらう間も、私の鼓動ははっきり聞こえるくらい速かった。
彼は私に水を飲ませ、電気を消した。
「ありがとう。今日は楽しかったわ。」
口をついて出ていた。
「僕もだよ。こちらこそありがとう。おやすみ。」
顔は見えないが、きっと微笑んでいるのだろう。
「おやすみなさい……」
そして、波に揺られるような心地よい眠気に身を任せていく………
……あっ!
目を見開く。一気に酔いが覚める。私はなんて間抜けなんだ。すっかりここにきた目的を忘れていた。彼を探りにきたのだ。
………でも、
と考え直す。彼が他の男とどこが違うのか、それは重要な事だろうか。竹の子に人が刺されて死ぬ、そんな奇々怪界な、どうせ理解などできない現象を考察して、何か意味があるのか。彼は死ななかった。それで十分ではないか。
この辺りで暗闇に目が慣れて来て、彼が私をベッドで寝かせ、自分はソファーで寝ている事に気付いた。
「ねえ。」
「うん?」
「私、あなたが好きだわ。」
衝撃が走る。いや、精神的なものではない。私の体が突き上げられた。思わず腹に手をやって気付く。
築き上げられたのではない。貫かれたのだ。
竹の子だ。それ以外にあるはずもない。
彼がゆっくりと立ち上がる。
「……君の竹の子、あれはね、罰なんだよ」
「……うぅ…………」
「君は地球の人間じゃない。月の人だ。僕と同じね。そして君は罪を犯し、『誰にも愛されず地上で生きる』罰を受けたんだよ。」
………現に竹の子に貫かれていては、信じざるを得ない。それにしても、竹取物語、あれを読んだ時にも思ったけど、月の人は随分残酷な性格をしているのね………
「けど君は、次々男を惚れさせて、次々殺すものだからね。月のお偉方は、君の残りの刑期を取り消して、執行官として僕を送ったのさ。『愛を知ってそれを失う悲しみ』が君への罰なんだってさ。」
彼は不快そうに笑う。
「わたし…は………なにを…して…罰…を……」
「君の罪か、知りたくて当然だよね。君は、好きになってはいけない相手を愛したのさ。さて、もう時間だね。言い残す事はあるかな?」
……言い残す事。あるとすれば一つだ。ついさっき知った、私の最初で最後の感情だ。
「そ…れ……でも…愛してる……わ…………」
そして、目の前が真っ暗になった。

【Gonootio追記】
視界は闇に覆われている
ここは何処だろう私は‥そうだ竹の子に貫かれたのだ
寒い、そして浮遊感、なつかしい

なつかしい?

閉じた瞼の向こうから淡い光が届く
じくじく訴える腹の痛みを堪え眼を開くと視界からはみでんばかりに満月がその威光を示していた
思わず眼を細めるほどまばゆい光は、どんな命も許さぬほど冷たく、何物にも犯されない神聖さを携えてるがなぜか優しい。
手を伸ばせば触れてしまいそうなほどの眼前に迫ったそれは永遠に見ていられるのではないかとさえ感じる
私は思い出す。地上の汚れた生き物には許されないその光景を、秘匿された神秘を、追放された5000年前の景色を。
後ろを振り返る
見えるのは地平の彼方まで広がる雲海と地上から私を押し上げた竹の子のみだ。
こうしている間にも延び続け空の淵から押し出された私の体は、今まさに宙の闇に飲み込まれようとしている。



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