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103:成し遂げたぜ つづき
第4世代 作者:Gonootio 
いい妄想ね:0 再生数(UV):74 妄想履歴:98101102
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【1】

 男は包丁を片手にぼんやりと佇んでいた。

 目の前には、もう一人の男の死体が転がっている。その腹部は血で真っ赤に染まっていた。

 大丈夫だ。もう動かない。死んだ。俺が、殺したんだ。
 男の包丁もシャツも真っ赤だ。
 目の前の男を殺すことが、彼の唯一の「目標」だった。

 彼は小学生の頃、酷いいじめを受けて引きこもりになった。
 そのいじめのリーダー格が、目の前の死体の男だった。
 彼は生きてきた。家族からゴミのような目で見られ穀潰しと罵られながら。
 彼には目標があった。この地獄を生き延びて「復讐」を成し遂げるという。
 そのためには、あらゆることに耐えてきた。懸命な努力の結果、人目の少ない夜の間なら外出できるようにもなった。
 そして、可能な限りの手段を用いて相手の居場所(安そうなボロアパート)を特定した。

 その結果、目標は成し遂げられた。
 酔って帰ってきた相手をアパートの廊下で待ち伏せし、包丁でめった刺しにしたのだ。
 幸い相手は足取りすらおぼつかない程酔っていたので、殺すのは難しくなかった。
 こうして、彼の目標は成し遂げられた。だが――

 ――俺はこの後、どうすればいい?

 彼にはそれ以上の目標も望みも何もなかった。

【2】

「何してるの? そんな所に居たら捕まるよ!」

 不意に背後から声がかかった。
 振り返ると、買い物袋を手にした若い女性が居た。

「え? …………あ?」
「いいからこっち!」

 血まみれの包丁を手にした男のもう片方の手を取って、彼女はアパートの一室へと招き入れた。
 奇しくも、殺した男の隣の部屋だった。

「もう……いくら夜中だと言っても、あんな所に居たら捕まるわよ」

 彼女は小さな子どもを諭すように言った。
 彼は彼女に事情を全て話した。なぜそうしたのかは自分でも分からなかった。
 ずっと長い間他人と話していなかったせいか、彼の口調はたどたどしく、お世辞にも分かりやすいと言えない説明であったが、彼女は辛抱強く聞いてくれた。

「そう……でも、正直死んで良かったわ」

 ――そうでなければ、自分が殺していたかもしれない。そう彼女は続けた。
 一週間前、彼女は殺した男に無理矢理に部屋に連れ込まれ暴行された。そして、証拠の写真や動画を撮られて脅されていたのだという。
 ばらまかれたくなければ、自分の玩具になれと――古典的な手だが、昔から使われてきただけあって効果は大きい。
 彼女はのらりくらり返事を引き延ばしてきたが、それも限界にきていた。

 そこで、男が死んだ。いや、殺された。

「これで良い――って、思ったの。これで……」

 彼は返事をしなかった。どう答えたら良いのか分からなかったからだ。

 その後、彼は彼女の部屋に居続けることになった。
 彼が帰りたくないと言うと、彼女がじゃあこのまま居なさいと言ったのだ――本当にそれで終わりだった。
 翌朝、警察が彼女の部屋にも来たが、玄関で彼女が対応してくれて、彼は奥にずっと隠れていた。
 警察は昨夜の刺殺事件を調査しているようだったが、彼女は彼のことは一切言わなかったし、自分が死体を見たとも言わなかった。

 こうして、奇妙な共同生活が始まった。

【3】

 男は夜にならないと外へは出られない。
 昼間は必然的に彼女の部屋にこもりきりとなった。
 彼女は朝出かけて夜遅く帰ってくることが多かったが、彼の昼食の用意を欠かさなかった。

 彼はほとんどの時間を一人で過ごした。それを退屈だとは思わなかった。
 それでも、どこかで彼女が帰ってくるのを心待ちにしていた。
 帰ってくると一緒に他愛のない話をしながら夕食を食べた。
 その後、時折体を重ねた。
 彼の方からも彼女の方からも「好きだ」とも「愛している」とも言わなかった。「どうして?」とも「なぜ?」とも問いかけなかった。
 彼は基本的にそれ以上何もしなかった。掃除も洗濯も家事らしいことは何も。早い話が女のヒモになっているのだった。
 そんな生活が一ヶ月続いた。

 とうとう彼は「働きたい」と言った。自宅で引きこもっていた時には考えたこともないことだった。
 彼女は「別にこのままで良い」と言ってくれたが、結局深夜のコンビニのアルバイトを紹介してくれた。
 人気の少ない深夜なら、彼も出て働けると思ったのだ。
 小学校すら出ていない男の経歴は、彼女が偽造してくれた。それは確認もなしにすんなり通った。
 こうして、男は深夜の数時間だけ働くようになった。女は寝入った後に帰ってきても良いように合鍵を渡してくれた。

 しかし、彼が帰ってくると彼女は起きて待っていることが多かった。
 待っていて、他愛のない話をしながらビールを飲んで、一緒に寝た。
 それから二ヶ月、何度目かの行為の後、彼女は言った。

「私ね――癌なんだ」

【4】Gonootio追

「癌?」
ああそうなのかーー
意外だった。まっとうな関係ならば彼女のことを哀れむか、若くして癌という理不尽嘆くか、はたまたショックで呆然としていたのだろうか。
しかし彼は何も感じなかった。

目の前の奇妙な偶然から居合わせた女は自分がもう長くないと言う。ああそう、それだけだ。

彼女が嘘をついているようには見えない。本当のことなのだろう。そう、どこかで理解しながらただ事実を無感情に受け入れた。
それからも不自然だが何も違和感を感じない関係は続いた。


年の瀬、町が雪の化粧を施す頃、彼女は買い物に出るといったきり二度と帰らなかった。なんとなくそんなことになるだろうという気はしていた。ついにその時が来たというだけだ。おそらく会うことはないのだろう。

何をする気もなく、ふと前から気になっていた彼女の日記を覗く。丁寧に番号が振られた大学ノートに彼女の日々が綴られていた。ぱっとみただけでも20冊以上はある。

一番新しいノートを開く。

    君へ
急にいなくなって驚いたでしょう?ごめんなさい。
あなたと最後まで過ごせればいいとも思ったけど、誰かに看取られるって柄じゃないし、1人どこか静かな所で終わろうと思います。
部屋は年が明けたら片付けるように業者に頼みました。
君の新しい家は用意したけど、年明けくらいまではゆっくりしててよ

最後に、
よくわかんない関係だったけど、君といるのはわりと楽しかったよ。短い間だったけどありがとう」

人は失って大切なものに気がつく
知らないうちに彼女が空っぽな自分の多くを満たしていた。もう戻れない。
しかし心はなぜか澄んでいた。

なんだかんだいって律儀なやつだったな
彼女の失踪を期に、新たな人生の幕を開けよう
そういえば、本当に小さな頃は警察になりたいとか思ってたっけ
復讐は終えた
けじめはきっちりつけた
やりなおそう
人生まだこれからだ
今なら何だってできそうだ。

最後に興味本意から始めのほうの日記を開く。10年以上前のものだろう。表紙がくすみ、字も拙い。

⚪月×日 
高学年になってクラス替えをした。あの人はどのクラスになったのだろうか。一緒のクラスに…

△月□日
あの人はどうやら隣のクラスらしい。あと今日知ったけど彼はグループから仲間外れにされているらい…

△月⚪日
彼へのいじめはエスカレートしている。いい気味だ。

×月△日
彼は暴力を振るわれ、かつあげをされている。

因果応報だ。だって私にあんな酷いことをしたんだもの
  





背筋が凍る。何で今まで思い出さなかった。俺は小学校のころ、子供ながら一人の同級生を脅し、暴行を加えていた。あの時襲った幼い少女の記憶と、肌を合わせた奇妙な同居人の体つきが重なり、吐き気を催した。

黙っていられず、窓を開ける
辺りは深夜の闇に静まり、夜の底は白く染まっていた。
静寂をけたたましいサイレンの音が裂く。
呆然とするうちに家のドアは何者かに蹴破られた。
「警察だ!」

ああそうか、復讐は俺だけのものではなかったのか…



コメント 名前:Gonootio 投稿日時:2019-07-03 22:23:32
前の人の意思あんまり汲めてない気がするけど許して
名前:異端者 投稿日時:2019-07-05 18:32:05
妄想なので自由に追記してくださって結構です。むしろ自分の思いつかない展開があって面白かったです。

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