G線上の点P 001

#点A−部屋


 私の父は殺された。いや、正確には死んではいないはずだ。父は今もあの忌まわしい空間を漂っているのであろう。永久に死ぬこともなく、老いることもなく、狂うこともなく、何もないあの空間を。
 ああ、普段から文章を書くという事をあまりしていなかったせいか、何を書けばいいか分からない。まあいい。コレは自分の感情や思考を整理するために書くのだ。誰も読む者などありはしない。ただの文字の羅列なのだ。読む者もいないし、存在を知る者もいない。つまり今書いているコレはこの世に存在しないものと同義だ。
 私はこれから父を殺した、いや、父をあの空間に送り込んだ奴を殺しに行く。手段は特に決めてはいない。まあまだ考えなくてもいいだろう。私はこれから長い長い旅に出るのだ。目的はカシオペヤ座α星、シェダル。220光年の旅だ。到着するまでに何か考えつくだろう。奴を殺すためならば、私は何だってする。特に取っておくつもりでもなかったこの処女を誰かにやってもいい、両手足を失ってもいい。絶対にあいつだけは殺さなければならない・・・。
 
 さて数時間後に私は地球を出る。やり残したことは無いだろうか。借りているアパートの契約の解除も済ませた。所持品の中で売れそうなものは片っ端から売って金にして銀行に預けた。母さんの墓参りも済ませた。無いかな。思い出せないのならばそれはやり残したと思うようなことではないのだ。さあ、準備は出来た・・・。
 
 できればあの「線上」は生きている間は絶対に通りたくなかった。あれは私の父が取り込まれた場所なのだ。あそこを通ろうとする度にあの日の記憶が蘇ってしまう。私の目の前であの空間に取り込まれてしまった父の姿・・・。しかし行くしかない。奴に会うためにはそれしか方法は無いのだ。覚悟を決めろ・・・。




〜

#点B−森

 今日もいい天気だ。いい感じに太陽が出ていない。湿度も70から80%ほどだろうか。私の体から出る菌の調子がいい感じだ。今ならどんな奴でも殺せそうな毒を出せる感じがする。まあそんな毒を出さずとも私を食べるようなやつなんていないさ。遥か昔のヨーロッパの方では私をゆでたり干したりして毒を抜いて食べたそうだが、今じゃそんな酔狂なやつはいない。捕食者のいなくなったこの時代。私は日々、菌をまき散らしながら思考にふけるのだ・・・。
 私はこの日々が好きだ。何も起こることなく平穏。たまにはどこかへ出かけたいという気持ちが起こるが、足が無いからどこにも行けない・・・。まあいいさ、今日は何を妄想しようか。

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