アルミホイル


1辺20cmの正方形のアルミホイルに反射した照明の光が私の顔を陰鬱に照らした。
「ああ、私はあとどのくらい我慢しなければならないのだろうか。」
私は私が勤める工場の自分の持ち場で一人、誰にも聞こえないような声でつぶやいた。
始業の時間まで手持ち無沙汰だったのでなんとなくアルミホイルをいじくっていた。
同僚たちが次々と出勤してくる。会話は無い。

作業の始まりを知らせるブザーがけたたましく工場に響き、それとともに目の前のベルトコンベアから大量の卵が流れてきた。
私はアルミホイルを1枚手に取り、卵が私の目の前に到着するのを黙って待っていた。
適当に選んだ卵をベルトコンベアから取り、アルミホイルで包み、またベルトコンベアへ返した。
これが私の仕事である。多分、工場をやめるか死ぬかしない限りずっと続けることであろう仕事だ。
卵は延々と流れていく。

私はこの作業が何なのかを知らない。最初はゆで卵を作るためなのかと思っていた(私はよくアルミホイルで包んだ卵を水に入れ、電子レンジで温めてゆで卵を作っていた)。
しかしゆで卵を作るのであれば電子レンジとアルミホイルを使わずに湯で沸かしてゆで卵を作ったほうが楽なのではないか。
そのほうがアルミホイルも、またそれを包んでいく作業や人もいらなくなるのだからそっちの方がいいに決まっている。
それだのに何故ゆえに卵をアルミホイルで包むのだろうか。
私はいったい何を作っているのだ?
午前の部の作業の終わりを知らせるブザーが響いた。私は弁当を持って食堂へと向かった。

「なあ自分たちがやっている作業って一体何なんだろうな。」
私は向かいの席に座った斎藤に話しかけた。
「なんだまたその話か。」
私は食堂で斎藤と会う度にこの話をする。特にコイツの意見を聞きたいというわけではない。
ただ特に話題が無いからだ。
「毎日5時間ただアルミホイルで卵を包むっていう仕事だろう?何の意味があるっていうんだ?」
「さあ?意味なんて無いんじゃないかな。」
「いや、でも実際に私らが働いて給料をもらっているっていう事はこの作業は何らかの利益を生み出すことの一部には違いないよな。」
「そうだね。」
「でも卵を包むことが何につながるんだろうか。」
「何かにつながるんだと思うよ。」
「なあ、さっきから適当に返事をしているけれども自分の作業に疑問を持ったことは無いのか?」
「最初の頃は思っていたさ、だけど今は、無いね。」
「自分のやってることに疑問を持たずに作業をするなんてロボットの様じゃないか。君はロボットにでもなったのか?」
「ロボットかもしれないね、働くってことはそういう事なんじゃないかなあ。」

昼休憩の終了を告げるブザーが鳴り響いた。私と斎藤はまたベルトコンベアの前に立ち、流れてくる卵を片っ端からアルミホイルで包んでいくのだ。

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