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063:ちんこ

 ある晴れた日の、暖かな日差しの中の出来事だった。私は特にやることが無かったので、近所の河川敷を散歩していた。道にチンコが落ちていた。
 最初は新種のキノコだろうかと思った。しかし違った。チンコである。それは嫌に赤黒く、弱弱しく、うな垂れていた。もう齢なのであろうか。
 私はそのチンコに興味を持ったため、近くにしゃがんで観察を始めた。何故だろう。このチンコに深い親近感を抱いた。そうだ、似ているのだ。私のチンコに。
 私は見比べるためにこの青空の中、チンコを出した。そっくりである。双子だろうかと思われた。

 ひとしきり観察して満足したので立ち去ろうと腰を上げたところ、道に落ちていたチンコが語り掛けた。

「拾ってください。私はチンコです、チンコです」

 私はううむと唸った。チンコは2つもいらない。2つあることにおける利点は何だろうか。
 排尿速度が2倍になることだろうか。いや、コレは特に利点ではないだろう。連れションした時に排尿速度の違いから、何か連れと気まずくなりそうだ。
 では性行為における利点は何だろうか。快感が2倍になる?いや、それは無いだろう。感じる箇所が2倍になろうとも解釈する脳髄は一つだけなのだ。射精量が2倍になる?いや、2倍にはならないだろう。キンタマは2個なのだ。むしろ1本から出る量が半分になってしまうので子供ができる可能性が減ってしまうだろう。
 私はかのようなことを考えていたが、ふと私のチンコはどう考えているだろうと思い、股間を見つめた。チンコはニヘラ、ニヘラと笑っていた。
 私は激高し、自分の股間についているチンコを引きちぎり地面へと投げ捨てた。なぜだろう。我慢がならなかった。自分が誰かのチンコである事の優位性から、地面に落ちているチンコを見下し、笑っていたことを。

 私は投げ捨てたチンコの代わりに地面に落ちていたチンコを股間に装着した。昔から自分のチンコだったようなフィット感だった。股間のチンコが言った。

「ありがとうございます」

 投げ捨てられたチンコは事態を把握していないせいか、しばらくニヘラ、ニヘラと笑っていた。しかし事態を把握するとピンク色の亀頭は海のような青さに変わっていった。

「助けてください!許してください!僕はチンコです!チンコです!」
「ええい!うるさい!」

 私は悲痛な叫びをあげる元チンコを残し、その場から立ち去った。チンコの上げる声は私が離れるにつれてだんだんと小さくなっていく。しかし私はその小さくなりゆく声に何かしらの変化を感じた。何かが揺らいでいるのである。ドップラー効果だろうか。
 私の歩く速度は、木の葉が自動落下する速度と同じである。その低速度のため、チンコが発する声に対してドップラー効果が発生しているかどうかは、私には認識できない。だがしかし、ちんこの悲痛な感情は私が離れていくにつれて大きく、そして悲しく変調されていくのだった。

 チンコの声が聞こえなくなったとき、私はふと股間を見つめた。チンコはニヘラと笑っていた。
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