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059:AM02:30の歩道橋


 「今日もいつも通り静かだな・・・。」
 私は口から出る白い息とともに小さい声でつぶやいた。ここは深夜の、それも人通りの少ないとある道。空には都会の汚い空気に邪魔されつつも、何光年も先から星々が懸命に送っている光が見える。周りは静寂。今、聞こえるのは一定間隔で繰り返される私の呼吸、心臓、歩行。それ以外の音という音は太陽とともに消え去ってしまったのだろうか。
 

 私は歩き続ける。街灯が無いため、辺りは暗闇に包まれている。ここらに住む住民は役所に街灯を設置するよう訴えているそうだが、私は反対だ。私はこの暗闇が好きだ。暗闇の中を歩くのはいい。暗闇の中を歩いていると、永久に出口のない一本道を歩いているような気分になる。普通の人であればそれは決していい気分ではないだろうが、私にとってはそれが一番心を安らがせる。できれば本当に出口など無くなってしまえばいいのに。私はもう現実に疲れた。しかしそんなことは起こりえないのだ。それが分かっているから私は道具を持ってきたのだろう?
 
 
 暗闇を数分歩くと「出口」が見えてきた。歩道橋だ。歩道橋の真ん中に設置された照明が暗闇をどこか遠くへ消し飛ばしてしまう。私はその照明の下に行き、音を立てないように準備をした。仮に音を立てたとしてもそれを咎めるような人間はいないだろうが、何となくこの静寂を壊したくないのだ。時刻を確認する。午前2時半。丑三つ時ももう終わりだ。そういえば何でこの時間にやろうと思ったんだっけ。丑三つ時を過ぎれば人間だけでなく、魔物もいないだろうって理由だったっけ。まあどうでもいい。


 深呼吸をする。肺が深夜の冷たい空気で満たされる。用意した道具がちゃんと動くか確認をする。どうやら今日も故障は無いようだ。歩道橋の上から道路を見下ろす。誰もいない。歩道橋の照明がスポットライトのように私を照らす。この瞬間、この世界には私しかいないのだと感じる。さあ、行くぞ!
 

 スピーカーから陽気なサンバが流れ出す!オーレ!さあ、スポットライトの下で今、私は全裸になるのだ!うっひょう!気持ちいい!やめられないね!やめられないね!課長の馬鹿野郎!いつもいつもお前は仕事ができないだのグチグチ言いやがって!だから何だっていうんだ!お前は野外露出できるのか!できないだろ!お前は俺以下なんだよ!うっひょう!オーレ!オーレ!オーレwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!

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