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055:殻付きゆで卵と露出狂


私の目の前に露出狂が現れた。それも漫画の中でしか存在しないようなトレンチコートを着た露出狂だ。
もう1月も半ばだというのに寒くはないのだろうか、いや、寒いのであろう。
露出狂は震えており顔が青く、唇はナスのような紫色になっている。彼の股間にぶら下がる貧相なソーセージは
さらに貧相に縮んでいた。
私は大きく息を吸う。叫ぶためではない。叫ぶのはかえって露出狂を喜ばせてしまうのだ。
私は勢いよく、右足で、露出狂の股間を蹴り上げた。
ざまあみろ。私はうずくまる変態を見下しながら警察へ電話を掛ける。
はずだった。
パキッと音がした。
睾丸が潰れるような鈍い音ではない。骨が折れたような音でもない。
なにか、そう、ゆで卵の殻を割ったような軽い音だ。
露出狂は股間を蹴られたにもかかわらず、現れたときと変わらない笑顔で私を見ている。

私はなんだか恐ろしくなった。はて、私は何を蹴り上げたのだろうか。
私は恐る恐る露出狂の股間を見る。露出狂の、粗末なソーセージの下には卵があった。
何か器具をつけているわけでもなく、2つのゆで卵がそこにあったのだ。
そして・・・。

バロットをご存じだろうか。東南アジアで食される、孵化直前のアヒルの卵のゆで卵である。
露出狂の睾丸はまさにそれであった。私が蹴り上げ、それを割ったことにより、卵からはヒナのようなものが垂れ下がっていた。
卵からヒナはその未形成な目で私を睨んでいる。

私のせいではないのだ。露出狂がすべて悪いのだ。
露出狂が露出をしなければ、私が相手でなければ、露出狂がかのような睾丸を持っていなければ・・・。

未形成なヒナは弱弱しくも、うなり声をあげ、震えている。
哀れにも今にも死にそうである。
私はそれから目を離すことはできなかった。ヒナをこんな無残な状態にしてしまったという負い目から。

時間がどれくらいすぎただろうか。
ヒナはうなり、震えている。
私はそれを今にも泣きそうに見つめている。
露出狂は何もせず、ただトレンチコートを開いている。

時間だけがただただ過ぎていく。



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