046:咎人

色はにほへど 散りぬるを
我が世たれぞ 常ならむ
有為の奥山  今日越えて
浅き夢見じ  酔ひもせず

私は私しかいない取調室の中で幼少の頃に学んだいろは歌を思い出した。
咎なくて死す。
いろは歌を7文字ごとに区切って7文字目を読んでいくと上のような意味になるらしい。
まさに今の私のようではあるまいか。まんまと嵌められた、あの女に。

警官が来るまでの間、私はいろは歌について考えていた。

『色はにほへど 散りぬるを』

「色」というのは女色があてはまるかな。
あの女は俺に色香を匂わせていたが、つい数時間前散ってしまったやうだ。

『我が世たれぞ 常ならむ』

これは、このままだな。まさか私の人生がここで終わってしまうとは思わなかった。

『有為の奥山  今日越えて』

有為の奥山。これは鉄格子か刑務所の壁を表すか。まあ、どっちでもいい。
私は今日ではないかもしれんがそれを近いうちに超えていくのだ。

『浅き夢見じ  酔ひもせず』

冤罪が発覚して外に出れるなんて儚い夢は見ないさ。あの女は既に俺の周りを自分の味方にしている。
悲しみに陶酔して、自分に酔ったりもしない。

なんだ、いろは歌は俺のために作られたのかな?
ああ、警官が来た。さて、これから私は社会的に「咎無くて死す」のだ。

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