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027:つぎはぎの記憶


昨夜の記憶が全くない。
私は昨日、会社からボーナスを支給されたので新宿で夜遅くまで飲み歩いていたのだった。
途中で酔いつぶれて寝てしまったかのように思ったのだが、気づくと家のベッドの上で寝ていた。

妻に聞いてみた。

「なあ、俺は何時頃帰ってきたんだ?」

「・・・・・・」

妻は返事をしない。
ははあ、それぐらい怒っているっていう事はだいぶ酷い醜態を晒してしまったのかな。
自分の身の回りのものを確認してみると、通勤に使っていたカバンがどこにもない。

「あちゃあ、どこかで落としてしまったかな。」

幸い、会社の機密情報などは持っていなかったので焦ることは無い。
昨日のルートを辿りながら行けば見つかるだろう。
記憶も戻るかもしれない。

「じゃあ、ちょっと出かけてくる」

妻はまた返事をしなかった。

昨日行った1件目の酒場を尋ねてみた。

24時間やっている居酒屋だから店員さんは忙しそうにしていて、なかなか聞き出せなかった。

「すみません、カバンの忘れ物はないですか?」

店員はなかなか取り合ってくれない。
すると奥の方から初老の男性が声をかけた。

「あんた昨日ここで飲んでいた人だろう?どうしたんだい?」

「いやあ、お恥ずかしい話ですが酔っぱらってカバンをなくしてしまって。」

「ああ、少なくともここにはないと思うよ。アンタがカバンを持ってこの店から出たのを見てたから。」

「そうですか、ありがとうございます。」

「まあ色々あるだろうけど頑張れよ!」

私は2件目に行った。


2件目でも3件目でも同じ感じだった。

店員は忙しそうで取り合ってくれない。
そのかわり常連のような方が教えてくれる。

人というのはいいものだね。


そして何件も回って色々な人の話をつぎはぎしていきやっとカバンを見つけることができた。
昨日無くした記憶がほとんど蘇った。
しかし1つどうしても分からないことがある。

「はて、じゃあ私はどこで死んだのだろうか。」


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