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011:涙の神棚に皆の神頼み


S県M村S神社の横に「涙の神棚」というものがある。
誰がいつ何の理由で設置したかはわからない。誰が名付けたかさえも。
村に古くから伝わる書物にも神棚の事は書かれていなかった。
そもそもどのようないきさつで存在が認知されるようになったかもわからない。
いつの間にか村の全員が神棚がそこに「存在している」ことを認識していたのだ。

S神社は村の中心から離れた山奥にあるため、人はあまり通らなかった。
しかしいつごろからか、村の人がほぼ全員、毎日神棚にお祈りをするようになった。
村民に聞くと、「涙の神棚にお祈りすれば何でも願いが叶う」らしい。
なぜそのようなことが村民全員の共通の認識となったのだろうか。
昔からの言い伝えでもない、小学校や職場での噂話から発展したわけでもない。
ある日、「突然」、それが村民の常識となったのだ。

ある若者が旅行でS県M村に訪れた。
もちろん神棚の事は若者は知らないはずである。
しかし滞在して2日経つころには神棚の存在を知っていた。
若者は村の誰からも神棚の事を聞かされていなかったにも関わらずだ。
聞くと若者は、神棚が「そこ」に「存在すること」を前から「認識」していたと答えた。
若者は翌日から神棚にお祈りをするようになっていった。

ある時、S県の方針で神社が取り壊されることが決まった。
山に道路を通すためらしい。村民はもちろん反対した。
そんな事はお構いなしに工事は進んでいく。
神社の近くまで道路を敷きおわり、神社を取り壊そうとした時、工事が中止となった。
理由は分からない。
結果として神棚への道が舗装されただけだった。
建設に携わった人はなぜか全員M村に引っ越したらしい。

最近、私の住む町でM村のうわさが流れた。
M村の連中は得体の知れないモノを神と崇め奉っているそうだ。
満月の夜には月が2つになり、村民は異形のものへと変化するらしい。
余りにも馬鹿げた話だが、なぜだろう。
あの村に限っては不思議と本当の事に思えてくるのだ。
あの神棚の存在のせいだろうか。


今もM村には神棚が「存在」している。
村民は今もお祈りをしているのだろう。
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